工事用カメラとかタフネスカメラというジャンルは古い。フィルム時代で有名なのはコニカの現場監督だが、フジフィルムもワークレコードとかK−28とか多くのモデルを展開していた。工事用カメラは丈夫でひとまず写っていればいいし、ランニングコストが低いに越したことはない。施工が始まってから写っていなかったなんてシャレにならないから、工事カメラのデジカメ化は早い段階から進んでいた。1998年に登場した、デジカメがコンパクトフィルムカメラの代用品として使えるようになったマイルストーンである
ファインピクス700の登場と、ほぼ同時にそれをベースにした工事カメラ「DS−260HD」が登場している。もっとも、DS−260HDはファインピクス700にハウジングで覆ったようなデカいカメラで、とても扱いやすいとは言えなかった。タフネスカメラというよりは水中カメラに近いくらいのデカさがある。勿論、DS−260HDは防水だが水中で使うことはできない。
本カメラはその1年後の1999年3月に登場した。前作のDS−260HDに比べて、ずっと小型になって、スマートな顔つきになった。現在の視点だと大柄なカメラに見えるが、当時のカメラは総じて大柄だったから、格別に大柄とも言えなかった。本カメラの運用レポートは
加治屋殿のブログに詳しいので、拙僧のコンテンツはカメラ視点での捕捉に止めたい。
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専用リチウム電池を使用していたDS−260HDに対し、本カメラは単三型電池を採用した。DS−260HDのベースモデルがファインピクス700だったように、本カメラのベースモデルは
ファインピクス1500だと思われる。しかし、本カメラは単にファインピクス1500をハウジングボディで覆っただけではなく、最適化と効率化、そしてチューニングを行っている。それに本カメラの登場はファインピクス1500よりも3ヵ月も早い。明確な違いはライカ判換算で28mmの広角レンズを搭載していた。当時のデジカメとしては、かなり異色の広角レンズである。当時の標準的なデジカメで35mmよりも広角のレンズを搭載したデジカメは極めて少ない。これだけでも、当時のガジェット好きを圧倒できる特徴なのだが、あまり認知はされなかったようだ。拙僧も知らなかった。機能は撮って確認するだけに簡素化し、メニューを開いても選択肢は一つしかない。もうちょっと気の利いたデザインにしても良いように思うのだが、ガテン系の方は気にしないだろう。グローブや軍手でも操作しやすいように、各部のインターフェイスは大きく単純化している。それに、これも驚いたことなのだが、起動も撮影も素早いのだ。当時は動くものはデジカメでは撮れないと言われていた時代だし、実際に電源スイッチを押下してから起動まで6秒以上もかかるデジカメが存在したのだ。ガテン系の方々は撮影なんかとっとと済ませて、本業に移行したいから素早い動作が求められたのだろう。
それにしても、本カメラのレスポンスは素晴らしいもので、ファインピクス1500に比べて断然素早い。28mm相当のレンズだから固定焦点(パンフォーカス)なのかとも思ったが、AFユニットを搭載しているようだ。フジフィルムの公式HPによるとRISCチップで画像処理を高速化したとか何とか書いてある。ファインピクス1500も当時としてはトロいカメラではなかったが、明らかに本カメラよりも凡庸なのは何故だろう。もっとも、本カメラの定価ベースが極めて10万円に近いのに対し、ファインピクスは6万円ちょっとだったから、処理系も相当奢ったのかもしれないな。
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本カメラのレスポンスからして、近代的なスナップにも耐える。困ったのはフラッシュの発行禁止ができないので、少し暗い場所だとキャンデットスナップ撮影は危険だ。それに、ガワが大きいので目立ってしまうかもしれない。
この種のカメラは出るときには大量に出る。工事業者が一斉に装備更新するのだろうな。惜しいのはプロテクターフィルターが汚れているので、撮影結果が少しソフトになってしまうことだ。プロテクターフィルターはねじ止めされているので、清掃しようと思えばできるのだが、ガテン系の方々は写っていればいいので気にしないのだろう。なので拙僧も気にしないで撮影した。
では、
撮影結果(名古屋散歩編)をご覧頂きたい。
(了:2015/1/27)