キヤノン パワーショットS10について


PowershotS10

☆ジャンク度☆
無し
撮影可能


PowershotS10 PowershotS10
 今でも継続するパワーショットSシリーズの初代モデル。
 ひとまず、キヤノンのレンズで200万画素級なだけでも嬉しい方もいただろう。

PowershotS10 PowershotS10
 スクエアボディがIXY(APS判)を思わせるが、呆れるほどデカい。


PowershotS10 PowershotS10
 モノクロ液晶パネルと光学ファインダーの組わせで撮影可能。
 当時のデジカメは燃費が悪く、気軽に液晶ビュワーを使えなかった。


PowershotS10 PowershotS10
 なにかとデジカメに対して煮え切らなかったキヤノンがS(スタンダード)を名づけた。  半年後に300万画素級のパワーショットS20が登場する。


PowershotS10 PowershotS10
 操作系は常識的で使いやい。
 拙僧はソニーのプッシュ兼十字キーのような妙な独自性が嫌いなのだ。
 しかし、キヤノンも後裔機のパワーショットS30でやってしまったな。


PowershotS10
 記録媒体はコンパクトフラッシュ。
 32MBもあれば、使い物になった。

PowershotS10 PowershotS10
 電源は専用電池だが2CR5も使用可能。
 デジカメの燃費が悪い時代だから、実際にはあっという間に使えなくなっただろう。

 誰も知らないし興味もないから価値も分からない。そんなクラシックデジカメにスポットライト(いや、コンテンツの趣旨からしてバルカーか?)をあてるのが、このHPの趣旨である。そうは言っても、本カメラくらいポジションが暗いと、なかなか話題作りも難しいのだ。方々のコンテンツで報告しているが、1995年にカシオのQV−10でデジカメが時の人となり、1998年のファインピクス700で(コンパクト)フィルムカメラの代用品として使えそうだと市場が認知し始めた頃も、キヤノンのデジカメ戦争への参戦は慎重だった。もっとも、この頃は他の光学機器メーカーも煮え切らない態度であった。オリンパスやリコーのように会戦初期から積極的に展開していたメーカーもあるが、どちらかというと稀である。この時の経営判断や人材・設備投資の逡巡がペンタックスの失速になりコニカの消滅を決定づけてしまう。キヤノンや他の伝統的光学機器メーカーの消極的な姿勢は、過去の電子スチルカメラの大失敗によるらしい。拙僧はリアルに知らないのだが、メーカーによっては屋台骨を揺るがすほどの大打撃だったらしいな。この辺の話は長くなったので別コンテンツに纏めさせて頂いたのでご一読いただきたい。
                ☆                 ☆
 そうは言っても世界の巨人たるキヤノンだから、デジカメ黎明期からしぶしぶ実験的に参戦している。パワーショットの名は1996年から登場する。パワーショット600と名付けた薄らデカいカメラは、恐らくムービービデオカメラの機能を限定したもので、基本的なモチベーションは電子スチルカメラと変わらないな。それなりにちゃんとしたデジカメとして登場したのが1998年10月に登場したパワーショットA5である。これは81万画素級でスタイリングはIXYを意識しているが、薄らデカくてもっさりとしたカメラだ。もっとも、同世代のライバル機だって似たようなものだから、本カメラの欠点とは言えない。それでも、キヤノンとしてはIXYブランドを与えるのには慎重だったようだ。レンズは単焦点だが、非球面レンズを2枚使っており、流石にキヤノンのカメラだから一定のクオリティを保っている。半年後の1999年4月には131万画素級でライカ判換算で28〜70mmF2.6〜4.0と、当時としては異例の広角系ズームレンズを搭載したパワーショットA50が登場する。それらの旧態系パワーショットAシリーズは、現存するパワーショットAシリーズの血脈としては続かなかったようだ。現在でも展開中のパワーショットAシリーズの開拓者であるパワーショットA10は、それ以前の旧態系パワーショットAシリーズとはコンセプトが全く異なる。簡単に言うと、IXYデジタルの電源を単三画型電池にして、常識的なスタイリングで使い勝手に重視したものだ。IXYデジタルはスタイリングは冴えていたかもしれないが、フィルム世代のカメラ民族にとっては付か安いものではなく、パワーショットA10から始まるコンセプトは真っ当なもので評価に値する。
 パワーショットAシリーズの「A」の意味するところはよくわからないのだが、更に半年後の1999年10月に「S」を冠した本カメラが登場する。本カメラはパワーショットSシリーズの開拓モデルであり「S」の意味するところは「スタンダード」であろう。ようやく、キヤノンも指標モデルを投入したのだ。世代的にはフジフィルムのファインピクス1700ZやオリンパスのキャメディアC−2020と重なり、そろそろデジカメの完成度が一定の安定性を形成した頃だ。正直な所、本カメラのポジションはそれほどエッジが効いたモノとは言えないな。スタイリングは相変わらずIXYを意識しているが、サイズは大柄で似て非なるものである。撮像素子は200万画素級でライカ判換算で35〜70mmF2.8〜F4の光学2倍ズームレンズを搭載する。パワーショットA50と比べると、かなり見劣りするスペックだ。それでも、キヤノンのブランドに傾倒している方からすれば、それほど悪いカメラではないと、その時は思えた。この際、10万円弱の投資を覚悟した方もいらっしゃるだろう。しかし、またもや5カ月後の2001年5月に本カメラをベースとし、300万画素級の撮像素子を搭載したパワーショットS20が登場する。これはコンシューマカメラに300万画素級撮像素子を登載したカメラとしては最初期のものである。カシオのQV−3000EXと先を競っており、国内市場ではカシオが先立ち、海外市場ではパワーショットS20の発表が速かったという説がある。このあたりはパールハーバーの奇襲よりも米潜水艦から我が国の駆逐艦への雷撃が速かったとか、歴史家による検証が待たれるところだが、こんなクラシックデジカメを検証する歴史家はいないだろうな。
                ☆                 ☆
 実際に使ってみると、そんなに悪いカメラではない。確かに、起動に5〜6秒かかったり、レリーズボタンを押下してから実際にシャッターが切れるまでもっさりとしたデュレイが発生する。しかし、当時のデジカメはそんなもので、格別に本カメラが劣っているのではないな。もっとも、特別に目立った長所も無く、本カメラを「やっとキヤノンが本気のデジカメを出してくれた」と思って10万円も払ってしまった方は、5カ月後に登場する300万画素級のパワーショットS20で愕然としてしまっただろうな。パワーショットS20だって、そんなに冴えたカメラじゃない。キヤノンが本気でデジカメ戦争参戦の切り札としたデジカメはIXYデジタル(初代)である。
                ☆                 ☆
 変な言い方だが、本カメラはクラシックデジカメとしてはツボを付いたカメラである。金属外装だが仕上げ気チョット雑とか、動作はもっさりだがそこそこの画像を写すし、操作系の合理化が精錬していない分、レトロチックで楽しいあたりがキュートである。難点はバッテリーで生き残っている個体は少ない。互換モノもあるが、かなり高いので本カメラの実質的な価格帯(200〜500円)には不相応だろうな。
 バッテリーが生き残っていれば30〜50枚くらいは撮影が出来ないこともない。被写体を選ばず、バッテリーの残るかぎり戦闘的に撮影するのが、クラシックデジカメを使った撮影の醍醐味だろう。

 では、撮影結果もご覧頂きたい。

(了:2014/6/2)

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