キヤノン パワーショットA710ISについて


PowershotA710IS

☆ジャンク度☆
具合無し
撮影可能


PowershotA710IS PowershotA710IS
 ライカ判換算で35〜210mmF2.8〜4.8の光学6倍ズームレンズにレンズシフト型手ブレ補正機構を組み合わせる。
 最早、巷のベーシッククラスカメラとは一線を画すな。


PowershotA710IS PowershotA710IS
 浮彫の「Canon」の文字が立派。


PowershotA710IS PowershotA710IS
 電池室を兼ねたグリップ部がオーソドックスなカメラのスタイリングを形成している。


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 伝統的にパワーショットAシリーズはマルチモードAEを搭載する。
 このクラスのコンパクトデジカメとしては大したものだ。


PowershotA710IS PowershotA710IS
 光学ファインダーが残っているのがキュート。


PowershotA710IS PowershotA710IS
 操作系は伝統的なパワーショットシリーズに準じている。


PowershotA710IS
 単三型電池2本で駆動するのが、本カメラも最も大きなアドバンテージである。


 本カメラの登場は2006年の9月である。パワーショットAシリーズは伝統的にエントリークラスだが、スタイリッシュ何かと使い勝手を限定したIXYデジタルに対し、単三電池を電源として使用し、オーソドックなスタイリングでフィルム時代からの移行への抵抗がなく、しかもキヤノンらしく作りに手抜きがないところが好感触である。初期のパワーショットA10A20は基本的にオートカメラだが、後裔機のパワーショットA30/A40は限定的ながらマニアル露出機能を搭載している。その後、パワーショットAシリーズはマルチモードAEを搭載するようになり、多くの上位クラスよりも自由な撮影が可能となった。ちなみにパワーショットA10の前にはパワーショットA5などのシリーズが若干存在するが、これらはキヤノンにとっても黎明期のカメラであり、電源もパワーショットSシリーズと同じ専用電池を使うなど、まだキヤノンが自社のデジカメシリーズのポリシーがまとまっていない頃のカメラなので、常識的なパワーショットAシリーズからは除外したい。
 レンズは35〜210mmF2.8〜4.8の光学6倍ズームレンズと、このくらいのエントリーモデルとしては凄いが、何といっても気が利いているのは光学手ブレ補正機構付きなのである。2006年次では、他のライバルで光学手ブレ補正機構を搭載しているカメラは思い浮かばない。勿論、電子式手ブレ補正機構のようないうおもちゃではなくてレンズシフト式の本格的な手ブレ補正機構だ。キヤノンはコンパクトデジカメに光学手ブレ補正機構を搭載することに意欲的ではなかったが、初めての手ブレ補正機構を搭載したIXYデジタル800IS以降は積極的に採用している。
 電池室を兼ねたグリップ部は大振りだが、構えた時のホールディングには貢献している。パワーショットAシリーズはパワーショットA540のようにグリップ部を小型化する傾向にあったが、本カメラでは存在感を増している。なるべくボディを小型化したいメーカーの意向だったのだろうが、本カメラのように存在感があった方が使い勝手は良好だ。全体的なプロポーションは初期のパワーショットA10に近いシルエットになっている。撮像素子は700万画素級。レンズの撮影最短距離は55mmだがマクロモードに設定すると、広角側で1cmまで寄れる。これはかなりのアドバンテージではないだろうか。
 単三電池型のコンパクトデジカメはロワークラスで性能も限定的だと思われがちだが、本カメラはなかなかクレバーである。電源起動も専用リチウム電池のカメラに比べると劣るかもしれないが、気になるほどではない。本カメラよりも遥かにもっさりしたカメラは沢山ある。ルミックスDMC−LZ10なんてフォーカスは遅いし、外すし、ISO感度の自動設定が実用からかけ離れていてシャッター速度がやたら遅くなるし、数字ばっかり立派でダメな感じのカメラだった。本カメラはカメラのベースがしっかりしている。ややダイナミクスレンジがプアなところはあるが、このクラスとしては健闘している方である。逆光でもそこそこ耐えている。1000万画素級クラスの高年式のコンパクトデジカメでひどい代物は沢山あるからな。レスポンスも良く、近代的なゲリラ戦に堪える。感心したのが日陰でもフォーカスが安定的でカメラ任せにできることだ。これは手ブレ補正機構が効いているのかもしれない。発色はキヤノンらしくぎらつくようなことは無くプルーフである。拙僧はプログラムAEのフラッシュ禁止モードしか使わなかったが、スマートなカメラだ。また、光学ファインダーを搭載しているのもチャーミングだな。
                ☆                 ☆
 本カメラのような単三電池型のコンパクトデジカメは国内ではあまり活性的ではない。しかし、海外のニーズは大きい。海外の連中は日本人ほど頻繁に撮影しないし、電池がパーになれば乾電池を買えばいいのだ。専用リチウム電池のようにメモリー効果の対策とかめんどくさいことはしたくないのである。それに安い。本カメラは日本での流通価格が3万円前後だった。これは米ドルに換算すると北米の貧乏連中が買える価格帯だう。無論、彼らは高価な専用リチウム電池の予備など望まない。
 面倒くさくなくて、楽で、安く、簡単に綺麗に撮れるカメラ。海外、特に北米にうってつけのカメラである。大振りのグリップも彼らには使い勝手が良いだろう。いつも思うのだが、日本のスリムカメラを北米の不器用な連中がうまく使えるのか不思議である。
 単三電池型のコンパクトデジカメは我が国では低く評価されがちだが、十分なパフォーマンスを持っている。何も薄型ボディだけがカメラの価値ではない。案外、本カメラのようなコンセプトがオーソドックスなカメラは、スマートフォンやiPhoneの時代でも存在価値があるのではないだろうか。
 


 では、撮影結果ご覧頂きたい。

(了:2016/7/29)

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